競馬人物誌

小倉の女馬券師の巻

(秋華賞のファインモーション号)
 競馬もメジャーな娯楽となって、女性の競馬ファンも増加している。特に最近は若い女性が競馬場
やウインズで見かけることが多い。一方、女性のファンは複勝中心の手堅い馬券が主流との話を聞
いたこともある。しかし、今回登場する女性はれっきとした勝負師である。
その女性は小倉競馬場の2階の決まった場所で、いつも椅子にはすに腰掛けて座っていた。毎週顔
を合わせるので面識はあったが、中年の女性でありそれほど注目していた訳ではない。

 ある日、私は久々の万馬券をゲットして、少々興奮して配当を受け取っていた。そのとき私の隣で
同じように配当を受け取っていたのが、この女馬券師だった。この女馬券師は配当を受け取ってから
台の上で札束をトントンとみみを揃えていた。この仕草から金額は分厚いもので、この万馬券を半端
な金額で買っていないことを物語っていた。大口の窓口ではなかったので、百万円は超えていなかっ
たようだが、それに近いお札の厚みだった。
彼女はその後もたいして嬉しそうな顔もせず、いつもの椅子席にもどり、平然とはすに構えていた。
連れが一緒にいるような気配もなく、なにかしら冷静に競馬をしているように見えた。

 別のある日のことであるが、その日は朝から全然馬券は荒れていなかった。我々は全く出番のない
展開で、とうとう最終レースとなってしまった。これが800倍を超える超万馬券となったが、私の狙い
の人気薄は後方から一気に追い込んできても、惜しくも届かず僅差の3着だった。逃げ粘った2着が
超人気薄だった。私は力なく帰途につこうとしたが、そのとき誰も並んでいない払い戻しの窓口に、嬉
しそうに待っていたのが、この女馬券師だった...


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