競馬人物誌

ひょっとこオヤジの巻

(秋華賞のファインモーション号)
最近ひょっとこオヤジが顔を見せている。何故かこのおじさん、ひょっとこみたいに、いつも口を斜め
突き出してしゃべる癖がある。以前は私の顔をみると、すぐそばに寄ってきてなんだかんだと話かけ
てきていた。しかし、私も含めて皆が敬遠するので、最近はそれに気がついたらしく、近寄ってこなく
なった。従って、顔見知りが居ないのか、ひとりで観戦しているようだ。このオヤジは年齢が全く不明
で、見当すらつかない不思議な人物である。

先日、久しぶりに会ったが、競馬新聞を持っていない。従って、競馬場には来ていても馬券には参加
しているかさえ不明である。酔っ払い名人はたまに競馬新聞をもたずにやってきて、JRAの出走表
で、競馬に参加することがある。それで馬券をものにして帰るから、立派なものである。
 しかし、このひょっとこオヤジは違う。そのJRAの出走表さえ手にしていないのである。要は競馬の
結果に興味がないということであろう。何故か? やはり馬券を買わないからしか、考えられない。
たまたまその日、そのオヤジが横にいることに気が付かずに、場内テレビで観戦していた。レースの
結果は明確な4−9であった。そのひょっとこオヤジが口を開いた。「何が入ったんですか?」

 やはり全然気が無いのである。このおじさんは他にすることもなく、金もないので時間つぶしに来て
いるのかもしれない。そう言えばどこか寂しそうだったっけ? 外で独りタバコをふかしている姿はな
んとも哀愁が漂っていたなあ。以前はもう少し、元気があったような気がする。ウインズに来ている人
は最終レースが終わるまでは、大概元気一杯だ。この人は例外。


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