競馬人物誌

天国のOさんの巻

(マーメイドSのヤマカツスズラン号)
 私の友人でOさんという人が居た。同業他社の人で良き飲み友達でもあったが、東京に出張してポ ックリ急死してしまった。このOさんが無類のギャンブル好きで毎週ボートや競馬にはまる生活であ った。休みの昼間はそうである上、夜は夜で飲み歩くような有様だったので、いつも金欠病でピーピ ー言っていた。だからよく友人から借金もしていたらしい。私も貸した一人であるが、亡くなってしまっ たので、私もあの世で借金を取り立てる楽しみが残ってはいる。

このOさん、オンナの方も好きでその道の店で、気に入った女性が既に指名中で駄目と判ると、文 句を並べて、店から袋だたきにされて追い出された経験もある剛の者でもありました。

私が小倉競馬場に通っている頃、そのOさんが自分は金が無いのに、人の財布を当てにして小倉 競馬場に昼過ぎにひょっこり現れた。幸いにその日は万馬券を取って、懐にゆとりがあったので、少 し融資してやった。これを元手にとこのOさんは嬉しそうに、そして真剣に競馬の検討を始めた。 この人も徹底した穴党であり、決して本命サイドの馬券には手を出さない主義であった。だからその 日も一攫千金を狙った馬券であることは間違いない。

レース実況が始まり、いよいよ直線を向き勝負どころにさしかかるや否や、このOさん突然「2−3」 と絶叫。なるほど馬券は穴の2−3の可能性大である。「2−3!」さらに「2−3!」と連呼。 最後は「2−3!、ニイサン、兄さん寄ってらっしゃい!」で本当に2−3で万馬券になってしまった。 あの嬉しそうな笑顔はもう見られない。残念である。


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