競馬人物誌

マツシタおじさんの巻

(秋華賞のファインモーション号)
ひとなつっこく話しかけてくるおじさんがいた。まるで知らない顔なのに買った馬券の説明をし
たり、何を狙っているのかなどと聞いたり、人類皆兄弟みたいな感じの人ではあった。
馬券暦はかなりのものらしく、現在は中穴狙いに徹しているようである。それ以来なんとはなく
親しくなり、帰りは車で送ってもらったりしたものである。どうやら八幡方面から来ているとかで
小倉競馬場から帰るとなると、帰る方向が同じだったからである。車中での話では、私が週末
に駅の売店で競馬の予想紙を買うのを何度も見かけたそうである。

ある日、我々はいつものように競馬を楽しんでいたが、残るは最終レースだけになった。マタシ
タおじさんはいつものように中穴狙いに徹し、これはという狙いを持っていた。私はいつものよう
な感じで馬券を買っていた。最終レースは人気がある。というより最後の勝負をここでやるファン
が多いのであろう。勝っている人は余裕の気持ちでどど〜んと、又負けている人もなけなしの金
をポケットからかき集めて一発逆転の狙いを秘めて。

最終レースは予想とおりゴール前もつれた。ゴールするやマツシタおじさんは「3−6でしょ!」
私の万馬券狙いの馬も突っ込んだが、確かにマツシタおじさんのいう馬券に見えた。写真判定
の際どい勝負となった。マツシタおじさんは馬券を握り締め、長い長い写真判定の結果を待った。
判定の結果が出た。6−13の万馬券となり、マツシタおじさんはがっくりと肩を落とした。


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