競馬人物誌

100万の札束男の巻

(秋華賞のファインモーション号)
帯封のついた100万の札束を掴む。これが競馬をやっている人のひとつの夢である。沢山の
金を賭けることが出来る人ならそのチャンスは多いだろうが、我々一般人ではなかなかその
機会はない。そのためには万馬券でも1万円で当てなくてはならない。だから夢なのである。
しかし、ある日その我々の夢である帯封付100万の札束を、ポケットに無造作に突っ込んで
いる男を見かけた。競馬場は昼食タイムで、その日は小倉競馬場で昼休みに何かイベントを
やっていたが、その男は2階から3階に上がる階段の途中でアトラクションを見ていた。

右のポケットに札束を縦に突っ込んでいるから、半分近くはポケットの外に顔を出している。ま
るで見てくれと言わんばかりである。確かにこの男は午前のレースで万馬券の大穴を当てて
いた。今年デビューしたばかりの武豊騎手の乗る人気薄の馬から流し、200倍超の馬券を手
にしたのである。その馬券を5000円で当てたものだから、夢の帯封付札束を手にすることが
できた。それが嬉しくてたまらないが、近くに誰も知り合いがいないので話す相手がいない。

ポケットの札束は何故ここに100万札束があるのかを、教えたく仕方が無いと言っているよう
でもあった。武豊がデビューの年であるからもう随分前の話ではある。しかし、今でもその札束
が鮮明に記憶に残っているのは、それだけ羨望の気持ちがあったためであろう。しかしその札
束男は1ケ月後にはその現金はもう吐き出してしまったということである。


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